1-Q ManagerがManagementを考える

海外駐在から帰国して公認内部監査人や中小企業診断士の資格の勉強を行っている頃、会社では輸出為替課の課長になっていました。新入社員のころに経験していた外国為替と貿易実務の仕事を再度担当することになりました。ベテランの一般職の女性が数人、中堅の総合職が1人、新入社員の総合職数人あとは派遣社員7-8名で成り立っている15人くらいの組織でした。

業務の内容としては双日株式会社の輸出に関する資金決済の全てを管理する仕事です。社外の取引先との決済には貿易信用状(Letter of Credit)の使用件数はとても多く、メンバーの1/3が海外から届いた信用状の内容チェック、もう1/3が船積み書類と信用状の整合性のチェックを担当し、残りの1/3は信用状以外の業務を少人数で担当するというようなチーム構成でした。

私が着任する以前のマネジャーは仕事量をこなすことを優先させ、船積み書類と信用状の整合性には重きを置かず、信用状で要求された書類枚数が整っていることだけをチェックし、内容のチェックはその後に書類が渡される金融機関に任せればよいという指導をしていました。仕事がいっぱいあるので、内容はともかく量をこなそうということです。

これでは、メンバーは機械のように流れ作業を行うだけになってしまい、何のモチベーションも感じられない仕事になってしまうと懸念しました。変えなきゃいけない。

自分の手元で内容チェックまで行った案件に関しては銀行から誤りを指摘された際に、銀行の指摘が適切でないと感じたら対抗しなければいけませんが、流れ作業で進めた場合には指摘されたら、そのまま受けるしかありません。内容について考えていないからです。さらに私の組織は書類を作成した部門と銀行の間に窓口として存在しているため、指摘事項をそのまま書類作成部署に伝えて、再提出を求めるということになります。

書類作成部門では言われたことを単に伝えるだけの組織として疎んじられていたようです。

私がマネジャーになって最初に行ったことは、①自分たちで内容のチェックを行う②そのために信用状のルールをしっかりと学習する③銀行の指摘は正しいものかの確認を必ず行う④正しくない場合には折れずに戦う
ということでした。自分の仕事を学習して、実践することでメンバーのモチベーションは相当上がったと思います。銀行から言われるがままに伝言してくるのではなくて、一緒に戦ってくれるようになったと書類作成部門からも評価があがりました。評価があがること、感謝の言葉を言われることでモチベーションはさらに上がってきます。

半年後には「良いチームができあがった」と感じられるようになりました。この間、私はことあるごとにチームメンバーとコミュニケーションをとりました。チーム毎の会話もあれば、ピンポイントで1名だけブースで話すこともとても良くありました。メンバーも不満の種が出てくると、すぐに私と話したがり、私も仕事の途中でもすぐに打ち切って話を聞くので、メンバーのストレスは早い段階で常に消失していたと思います。不満を持つ人は話して伝えるだけでもずいぶん楽になるもののようです。怒りに満ちた目で話をしたいと申し入れた方が話終えたときに「あー全部言った。すっきり」と言いながら席に戻り、いつものような笑顔で仕事を再開してくれるのはとてもうれしいことでした。コミュニケーションはチームビルディングには欠かせない一番大事な要素の一つだと感じています。先入観を持たずに、相手をRespectして話すことは相手の本音を引き出すためにはとても重要だと考えます。
相手の本音を引き出し、相手の意欲を向上させ、相互の信頼感を醸成できれば、ほとんどの人はわくわくした気持ちをもちながら自律的に動いていくものだと実感しました。自分の業務を作業ではなく、仕事として昇華させることは本人が自分事として仕事をとらえ、どうすれば仕事をより良くできるか、どうすれば他の人の役に立てるかという視点で考えるようになってくれます。

今回のコラム記事はここまでとしますが、先日朝日新聞のWEBメディアである「ツギノジダイ」に依頼されて提案力について記事を書きました。ぜひご一読くださればと思います。

 



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