1-U 中小企業診断士の研究会的組織BCNG

中小企業診断士は1次試験・2次試験の合格後に実務補習という実際に中小企業に赴いて経営診断・助言の研修を受講して初めて資格を登録できることとなる。とにかく早く登録したかった私は東京都中小企業診断士協会が主催する実務補習15日間コースに申し込んだ。協会主催の実務補習は6人程度が1班として構成され、独立した実務経験豊富な指導員が1名配属される。この指導員の先生のリードにより、5日間で1社を経営診断を行い、これが3回繰り返されることで終了証が発行されて、晴れて経済産業大臣への登録となる運びだ。

私達の班の指導員は当時東京都中小企業診断士協会中央支部の支部長をされていた小野修一先生。とても穏やかな優しい方で、今でも親しくさせて頂いている。2010年の2月から3月はこの研修で超多忙な日々だった。そもそも5日間コースというのは初日金曜日に企業を訪問して経営者からヒアリングを行い、翌土曜日に班内で100ページほどの診断報告書の方向性を決め、経営全般・営業・仕入・財務・ITなどの役割分担を決める。その後1週間ほど、各自の作業にはいり、次の土日で分担したパートを取りまとめて報告書を完成させ印刷に回し、月曜日に再度企業を訪問して、報告書をもとに報告会を開催する。これが1ターンだ。

共同の作業なので一人でもさぼる人間がでるとえらいことになってしまう。慣れないうちは筆が進まず、20ページほどの担当部分を書くために深夜まで取り組んだものだった。かつ、5-6人もいるチームだと一人くらいは必ずさぼる人間が出てくるのもある意味し方のないことかもしれないが、こんな研修を経て4月1日付の資格登録を済ませることができた。

4月は中小企業診断士業界も他の組織と同じように新人歓迎のムードにあふれかえる。東京都診断士協会は会員数が多いことから、中央・城東・城西・城南・城北・三多摩の6支部に分割されている。私は支部長だった小野先生について中央支部に協会に入会することとなった。

東京協会では毎年スプリングフォーラムと称する新人歓迎会が催される。協会には多くの研究会やマスターコースと呼ばれる、より専門性の高い研究教育団体が存在する。スプリングフォーラムでは、これらの団体がそれぞれ独自のカラーを打ち出したブース展示で新人獲得を目指すものだ。

研究会は永続的に参加でき、会費は年1万円程度が多いように思う。マスターコースは1年で終了するプログラムだが10-30万と、かなり高額になる。勧誘側の熱量も価格と比例している感があり、この積極的すぎる勧誘が、めんどくさくあまり好きではないなと感じて少なくともこの年にはマスターコースの受講はやめておこうと考えていた。

ところがその後の懇親会である。初めて参加し勝手のわからない新人に対しても、先輩診断士たちが声をかけてくれる。そんな時に実務補習の指導員が支部長の小野先生であると伝えたときに「じゃあうちのマスターコースに入らなきゃ」と肩をくんできた中年の男性がいた。その後東京診断士協会の副会長まで勤めた鳥海孝さんだ。マスターコースの名称は「経営革新のコンサルティング・アプローチ」という長い名前だ。受講生も運営側もあまり正式名称で呼ばず、運営団体であるBCNG(Brains Consulting Network Groupの略称)で使っている。参加しているメンバーがとても魅力的で、素敵な人ばかりだったので、受講するつもりのなかったマスターコースに参加することにしてしまった。

一般的な他のマスターコースでは1年学んだ後は、その知識と経験を活かして自分で道を切り開いていくことになるものがすくなくないのだが、BCNGはちょっと違っている。

BCNGでは1年間みっちりと経営について学ぶ場を提供しているが、1年のコースを終えると、今度は講師として運営側であるBCNGに参加することになる。1年学んだ後に一生の付き合いが続くというのはとても良いコトのように感じている。
学ぶ内容も経営戦略からIT戦略・マーケティング・顧客管理・リードタイム削減・在庫管理・HRマネジメント・事業再生・新規事業開発・国際化・ファシリテーション・プレゼンテーションと幅広く経営に関わる全てを学ぶコースだ。

このコースでプレゼンテーションの講師を担当していたのが、当MCNのメンバーでもある松波道廣さんだ。BCNGは講師ではない先輩メンバーの講義を聴講し、懇親会も参加することが通例になっていたが、松波さんはご自身の講義以外はほぼ参加しない。その代わりにBCNGの有志で開催するゴルフ会のリーダーで年3-4回ご一緒している。松波さんのご紹介で私はMCNに参加することになった。でもそれはこの時からさらに14年の時を経たのちのことである。

 

 

 

 



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